アンパンチは、さよならの合図。

日常の違和感

幼い頃から、当たり前のように見てきたヒーロー、アンパンマン。 バイキンマンが悪さをすれば、力強く「アンパンチ」を繰り出す。その光景を、私たちは勧善懲悪の正義として眺めてきました。

しかし、生みの親であるやなせたかし氏は、かつて他国のヒーロー像に一つの違和感を抱いていました。敵を倒して、一人で偉そうにしている。それは本当に「正義」なのだろうか、と。

その問いの先に生まれたアンパンマンの戦い方は、極めて特異です。 アンパンチを受けたバイキンマンは、決して致命傷を負いません。ただ、「バイバイキーン!」と叫びながら、空の彼方へ遠ざかっていく。 (……これって、相手を「倒す」ためのパンチではないと思いませんか)

あのパンチが本当に意味しているもの。 それは、相手を殲滅することではなく、やさしく「距離」をおくこと。 今、この場で絡まり合ってしまった悪い流れを、一度リセットするための儀式なのではないでしょうか。

私たちは、自分と合わないものに出会ったとき、つい相手を正論でねじ伏せたり、自分の正義を認めるまで徹底的に戦ったりしてしまいます。けれど、相手を消し去ろうとするほど、自分の中にもトゲトゲとした嫌な感情が残ってしまうものです。

ここで、自分の中に「やさしいツッコミ」を入れてみます。

「戦って勝つことが、本当に唯一の正解なのかな?」

無理に分かり合おうとしなくていい。ただ、今は少しだけ、お互いのために「距離」をおいてみる。 「今はバイバイ、また今度ね」

そうやって、衝突の熱から自分を遠ざけること。 それこそが、自分と相手、両方の心を守るための、最もやさしい解決策なのかもしれません。

一人の強い正義がすべてをなぎ倒す世界より、みんなが「アンパンチ」を心の中に持っていて、「今は離れておこうか」と笑って距離を選べる場所の方が、きっと、隣の人のお腹を想像する余裕も生まれるはずです。

次に、何かとぶつかりそうになったときは、 いったん力が入る前に、 「今は距離をおくタイミングかも」と 自分の中を一周してから、返事をしようと思います。

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