こちらを読んでいただくと、商社の役割が大まかにわかります。規模によっては資源を丸抱えするような商社もありますが、一般的な商社の役割についてになります。
結論から言いますと、商社の仕事は
「信頼関係を築いたうえで、商品を右から左に流す仕事」です。
よく商社の仕事に対して揶揄される言葉で、
「右から左に流す”だけ”の商売」
と言われることがありますが、商流上はその通りです。
私自身も、実際に商社の立場で働くまではそう思っていました。
自分たちは生産は行わず、商品、製品を右から左へと流しています。
商社の役割について初心者向けに解説します。
簡潔に言えば、仕入れ先→商社→販売先という流れの中心に商社がいます。
こう書くと左から右に流していますね。
私自身もお客さんから、「直接メーカーから買うから いらない。」ときっぱりとお断りされることがあります。
NOの一言で終わるわけです。
そこで私は思います。わかってないなあ、と。
説得する無駄な時間をお互い避けられるので良いですが、それでも商社の役割はちゃんとあります。
それでは、なぜ商社が必要なのでしょうか。解説します。
なぜ商社を使うのか、その疑問にお答えします。
その理由は大きく3点あります。
①営業代行の役割。メーカー側の規模により営業力が足りないため
世界一良い製品があっても、製造するだけでは売れません。
逆にそんなに大したことが無い商品でも良いイメージと、お客様が購入しやすい環境があれば飛ぶように売れることがある、というのは理解いただけるかと思います。
多くのメーカーでは生産することが中心軸にあるので、その会社の規模によっては海外の顧客への営業まで力を入れられないため、商社と協力するというわけです。
営業を雇えば良いじゃないかという疑問への答えは、
メーカー側が固定費=毎月の支出を上げるのはイヤ、
というメーカーの立場を理解してもらえれば納得がいくかと思います。
売上が下がっても、商社経由で販売していれば、営業の給料を確保する必要が無いのでリスク分散になります。
②銀行の機能、支払いに柔軟性を持たす。
仕入れ先(=工場)→商社→販売先(=工場)
まず、上記の式をご覧ください。
例えばスマホメーカーに部品を販売する場合、販売先が工場であれば、
部品を受け取ってから製品にし販売するまで当然、一定の時間がかかります。
この間は工場側は収入がありません。
これが積もり積もると、全体の流れは黒字であっても、一時的にお金が不足するようなことがあれば倒産もあり得ます。
いわゆるキャッシュフローの問題による黒字倒産です。
仕入れ先(=工場)→商社→販売先(=工場)
→この先にも同じ流れが・・。
これは部品を作っている仕入れ先にも言えることです。
販売後すぐにお金を回収するのがその会社の要望になります。
次の生産のために仕入れを起こす必要があり、常に手元に資金が必要だからです。
しかし、販売先の工場は、部品を仕入れる際にはできるかぎり遅く支払いたい、
そして、お金を回収するときにはできる限り早く払ってほしい、と思うはずです。
そこで登場するのが商社です。
この支払い条件のギャップを埋める役割を果たせます。
販売する側は30日でお金を回収したい、購入する側は60日で支払いたいという譲れない一線がお互いにあれば、永遠に平行線のままで商売ができません。
そこで商社が入り、例えば仕入れ先に対して、出荷後30日で払い、販売先に対して出荷後60日で回収という条件にすれば、30日分の支払い猶予が出てきます。
簡単に言えば、製品を生産する立場のお客さんの場合、
商材を買ってから30日で生産し、
その先の販売先から30日で売上金を回収すれば、
30日+30日=60日
という日程がかかります。
商社は間に挟まれて、
60日で回収ー30日で仕入先に支払=30日分回収が遅れます。
商社側が財政的に問題の無い範囲に留めれば販売時に上乗せした利益(例えば販売金額の3%上乗せ分)を確保できます。
こう考えると、利息ではなく、利益で一時的にお金を貸す銀行のような役割を商社が果たしています。
③信頼関係をベースに、得意先に見えていない関連商品の提案ができる
例えばある会社が何かの部品をA社製の1社購買で購入していたとします。
そこで我々商社の営業が訪問し、その会社に対し、他にもこういった製品Bと関連する情報がありますよ、と紹介します。
世の中には情報がありすぎて、どこのどれが信頼できる製品なのか分からないことが多々あり、同業界での市場情報と共に使用できるアイテムを紹介すれば、喜んでいただけます。
そもそも信用のない会社から人は買わないのです。
信頼する商社からの紹介であれば、問題があった場合でも対応してくれますし一石二鳥です。
以上が商社をわざわざ通す理由3点でした。
他にも規模が大きくなれば仕入れ先に投資したり、資源に投資して儲けを拡大させるなどがありますが、あくまで一般的に商社が必要な理由を書きました。
番外編 商社の役割? お客様を接待に連れて行く
物が何であるかに関わらず、企業と企業のつながりは人間同士です。それをより円滑にするために食事やカラオケに得意先を連れて行くことも一つの役割です。
ゴルフ、カラオケ、お酒のある食事、と色々な方法がありますが、得意先の好みに合わせて接待に行くことは良くあります。
メーカーと商社の両方を経験して分かったことは、経費の自由度の違いです。
メーカー:厳しい、堅い
商社:融通がきく、緩い
要するに同じ領収書でもメーカーでは通らなくとも、商社では通ることが多々あるという意味です。
もちろん、会社のルールによりますがその柔軟性は大きく違います。
そうなると、接待は商社に任して信頼関係を築いてもらう、というのも
メーカー側の思惑にあります。
そうなればWin-Winの関係になり得ます。
私の場合は、個人的にはゴルフも麻雀も、ギャンブルも、女性のいるカラオケに行くことも含めて全てプライベートではいきません。
ゴルフや麻雀に至っては全くできませんが、商社の営業職は成り立ちます。
接待は得意先との潤滑剤なので、得意な接待方法に特化していけば問題ありません。
私の場合は食事や女性のいるカラオケ中心です。
大切な点は接待の場を仕切る=支配するということです。
これは心理学、行動経済学の観点からも効果が実証されている方法です。
場を支配することで信頼関係や、話をより聞いてもらいやすくなるのです。
では場を支配するにはどうするのか。
シンプルに費用を支払うことです。
もちろん経費です。これが最強かつ効果的な方法となるわけです。
右から左に流すだけ?その通りですが、どこからどこに流すかが課題
最後に、一口に販売する製品を右から左に流すと言っても、
それがどの地点の右側で、どの地点の左側かが決まってないと話は進みません。
大事なのは信頼関係を築いたうえで、
どこから仕入れ、どこへ販売するかルートを作るということです。
しっかりと利益を生むちゃんとしたレールをこしらえることが一番難しい商社営業人の課題であって、面白みのあるところでもあります。WIN-WINの関係を築ければ最高です。
実際に経験した例で言えば、日本の企業がインドネシアで製品を生産するために、わざわざ日本から部材を購入していました。
話をよく聞くと日本の製品で無くてもいいようなので、近くのマレーシアの製品をほぼ半額の値段で提案。
商社の利益もしっかりあり、まさにWIN-WINの形にはめることができた成功例ができあがりました。
これが本当の意味での商社の仕事です。
商社の仕事は無くならない!
上記のような役割でWin-Winの関係が築ける以上、商社の仕事は無くならないと断言できます。
ただ、会社に通う必要ある?といつも思っています。
私は会社員なので、出張の無い日は会社に通勤する必要がありますが、
いつも思うのはこの職業は別に会社に毎日通う必要はあまり無い、ということです。
その辺の認識もコロナで大分変りました。
パソコンと電話さえあればある程度成立する職業であるし、どこの国とやり取りするかによっては9時-17時の定時の考えさえ必要ないからです。
私自身、年に一度、約2週間の帰国休暇などありますが、暇な時間に電話やメールでサポートすることで仕事が成り立ちます。
その間、右から左に円滑に流しているだけです。
こうなると遠隔で仕事をするのが普通になる日は遠くないと感じています。特にコロナ後はそれが常識へと変わっていくでしょう。
本当の意味でこの営業職で求められているのは世の中に価値を提供して利益を上げることのみです。
良く考えるとネットビジネスのブログアフィリエイトも商社と似た商売です。
信頼関係を築き、その人、そのサイトから特定の商品を購入してもらう。
自分は生産しない。在庫も持たない。支払いはクレジットカード決済で柔軟に。
非常に似ていますね。
2020年以降、在宅勤務が普通になり、全ての商社マンはブログアフィリエイトの魅力に気付き始めているかもしれません。
この流れは一気に加速しそうです。
ご参考になれば幸いです。
以上です。