「来年、日本経済は崩壊する」 「この方角に黄色いものを置けば運気が上がる」 「これからは〇〇の時代だ」
経済予測家、占い師、風水師、そして時代の寵児と呼ばれるインフルエンサーたち。ジャンルはバラバラですが、彼らには共通する圧倒的な「資質」があります。
それは、「もっともらしい説を、説得力高く語る技術」です。
■ 検証されない「予言」のサイクル
不思議なことに、彼らの予測が「本当に当たったのか」を厳密に検証する人はほとんどいません。
予測が外れても、次の新しい予測が提示されれば、過去の失敗は霧の中に消えていきます。発信する側も、そしてそれを受け取る側も、あえて「答え合わせ」をしようとはしません。
なぜ、私たちはこれほどまでに「根拠のない断定」を繰り返し求めてしまうのでしょうか。
■ 脳にとって「不確実性」は最大のストレス
認知科学の視点で見ると、脳は「どうなるかわからない」という空白の状態を、生存を脅かす大きなストレスとして認識します。
未来を予測しようと自力で思考を巡らせることは、膨大なエネルギーを消費します。そこに、強い言葉で「こうなる」と断定してくれる人が現れると、脳は思考のスイッチをオフにし、「考えるコスト」をゼロにすることができます。
私たちが彼らに求めているのは、未来の真実ではありません。「これで安心だ(あるいは、こう備えればいいんだ)」という、目先の納得感という名の報酬です。
■ 結論という名のエンターテインメント
「もっともらしい物語」は、脳にとって最高の娯楽です。 どれほど論理的に破綻していても、語り手の自信に満ちた態度や、巧妙なレトリックによって「筋が通っている」と感じた瞬間、脳内には快楽物質が流れます。
結局のところ、多くの予測は「データ」に基づいたものではなく、私たちの「信じたい気持ち」をハックするエンターテインメントとして消費されているに過ぎません。
■ 思考の源泉を辿る試み
ここで、自分の中に「やさしいツッコミ」を入れてみます。
「誰かの力強い断定を聞いて『なるほど』と思ったとき。自分は今、真実を知って納得したのかな? それとも、考えるのをやめて楽になりたいだけかな?」
「わからない」という空白を、空白のまま抱えておくことは、確かに疲れる作業です。しかし、安易な断定に飛びつかないその粘り強さこそが、あなたの思考の主権を守る唯一の手段となります。

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