失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織という本の紹介です。
失敗に向き合えない組織、個人はフィードバックを受けられない状態と同義で間違いに気付かず、ずっと失敗を続けてしまうということが語られた本です。
まず結論から。
カルト教団の教祖が予言が間違っていた時、信者はそのまま教祖を信じ続けます。
そんなことあるのか、と言いたい気持ちも分かりますが実際に合った話です。
私はこの本を読んだ後、久しぶりにすごい本を読んだなあ、と感想を持ちました。
そしてこちらKindle Unlimited内に入っているので、アマゾンユーザーの方は
すぐに手に入れることができます。
カルト教団の教祖が大洪水で人類が絶滅すると発表→大外れの結果、信者の行動やいかに。
結論から言うと、大洪水が来るはずだった翌日も何事もなく布教活動を続けましたとさ、
めでたしめでたし。
まさにオイオイそんなことが、という驚きの信者の行動が1950年代のアメリカで実際に観察された
ことが確認されています。。
信じられないですよね。
そうです、カルト教団の信者も同じで教祖の予言が外れたことが信じられないのです。
そして自分が傷つくのを防ぐため信じません。
大洪水が来なかったことは信じられないというより、認識の外に外したようなものです。
なぜこんなことが起こるのか。それは認知的不協和という一言に集約されます。
簡単に言えば「都合の悪い現実を現実と認識しない、させない」ように脳が働くわけです。
こちらに関する大まかなストーリはこちらです。
1950年代のアメリカの心理学者が、カルト教団の新聞広告を発見します。
なんと「大洪水が来て人類が滅亡する、だから入信しましょう」と募集をかけていました。
これは千載一遇のチャンスととらえてエセ入信し、潜入型実態調査を行った結果
面白い事実が明らかになります。
それが上記のように、教祖の予言がどれだけ外れても自分たちの間違いを認めるには
至らず、信者としての生活を益々熱心に続けることとなるのです。
その理由、考え方の過程としては以下です。
・自分の間違いを認めることは心理学的に痛みを伴うので認めたくない
・認めさえしなければ自分は間違っていない
・間違っていないのであれば、熱心に布教活動を進める
ということです。
間違いを認めるというのは私自身も非常に困難を極めます。
それは嫌ですよね。以前の自分がアホでした、と発表するようなものなので。
何より問題なのは間違いを指摘する環境にないということです。こうなると
明らかな間違いでも、根本的な解決を見ずにそのまま突き進むのです。
ただ、このような特殊な宗教団体の中だけなら被害も少なくまだマシです。
ただ皆さんがご想像する通り実社会でも同じようなケースが起こっているのが
怖い点と言えるでしょう。
実社会で間違いを指摘しない人がいないとどうなるか
例えばですが、会社がおかしな方向に突き進みます。
社長や上長に「これおかしいですよ」と指摘できない組織であれば、間違った判断でも
そのままです。
仮に飛行機であればフライト中であれば墜落するような事前現象があっても、
そのまま進んでしまいます。
「そんなことあるかな?」と思ったあなた。この本の中に実事例が紹介されています。
どんな場面であったかというと、ジャンボジェット機が空港へ到着する際に
燃料が少ない中の飛行中でした。当然、パイロットは認識しており
機関士からの燃料が少ないことを婉曲的に指摘されます。
ただ、運転に集中しており時間感覚が失われてしまいます。ベテランの機長でも危機になれば
異常な集中力が増し、時間間隔が失われやすいのからです。
そこであっという間に時間切れ、燃料切れがきてしまい、不時着という選択肢しかなくなりました。
私たちは冷静に本を読んでいるので、この文章を読んで「なんで?」という
疑問符が頭に浮かびます。
ただ、緊急時に通常の上下関係を逸脱して強く発言できる人は少ないのです。
副操縦士も機関士も死ぬことよりも、ヒエラルキーを維持することを選んでしまいました。
結果は最悪ですがこういったことは起こり得るのです。
失敗の科学という本が伝えたいこと
結論から言うと、この本が言いたいことは
「立場に関わらず適切な反論やフィードバックを受けられるようにすること」です。
つまりカイゼンを求めるトヨタ式は正しいようです。(会社の雰囲気が良いかは別ですが)
私の個人的な経験を言うと、いわゆるブラック企業に勤めていた際は、
全くそんなことがありませんでした。フィードバックを受けさせない威圧感、制度が
整っていたからです。ようするに自分の意見が絶対になってしまいます。
裸の王様に気付かない状態というのは案外、身近に起こっているのだと感じざるを得ません。
環境がこうなると仕事は楽しくないし、得意先や協力する代理店とも歪みが生まれてきます。
もしあなたが部下で無力感を感じるのであれば辞めればいい話ですが、
上司という立場であれば、すぐに改善に取り組まなければ停滞をお約束します。
会社、組織が停滞するのを避け、希望の持てる組織にするには本書が一つの大きな
道標になってくれると確信しています。
皆様、是非どうぞ。
以上です。