今回は数々の迷信を統計的にぶった斬る本のご紹介です。統計的、確率で物事を見ていくとどうなるのか。考え方や実際の統計的アプローチを学べます。
タイトルの通り、統計的には宝くじに当たる確率はどんな場合も常に一定です。
例えば、数字選択式宝くじのナンバーズで選んだ数字に当たりやすい数字などありません。
その事実をいやでも納得させてくれる本です。
いきなり残酷な宣告するなよ!という人もいらっしゃるかと思います。
しかしながら時に真実は残酷なものと心得てください。
本で語られている各エピソードを紹介します。
統計的に当たりやすい宝くじの番号は無い。 人が選びやすい番号はある。
著者である統計解析のプロで、統計科学者には日常的に質問が来るそうです。
(番号選択式の宝くじで)
・当たりやすい番号はありますか
・当たりやすい場所はありますか
・当たりやすい職業はありますか
・こんな法則を利用したことで宝くじが当たりました。統計的にどうでしょうか。
答えはそれぞれ、ない、ない、ない、関係ない。以上です。
あくまで統計的な話です。
また、宝くじの選択数字タイプの当選数字はランダムであることが前提の上です。
逆に人が選びやすい番号は自信にまつわる番号、つまり誕生日などになります。
この場合、数字はどうしても31以下になり、それ以上の番号は
相対的に選ばれないことが判明しています。実際に47個の数字を選択する宝くじで
全て31以下だった組み合わせの場合は、当選者が重複し、山分けになる可能性が
高くなります。当たれば誰も文句は言わないかもしれませんが。
統計的な視点でとても大切なのは、何かの数字が一方的に当たりやすい、
もしくは特定の人にあたりやすいなんてことは統計的にありえないということ。
もし、そんなことがあればそれは詐欺か何らかのグレーな背景があります。
不正?宝くじの販売カウンターの人が普通より4倍高額当選者になりやすかった事例
アメリカのある州で実際に合った事実です。
ある日、宝くじを買った券の保持者が、宝くじ販売カウンターの窓口で確認したところ、
「ハズレです」と伝えられる。
ただ実際は高額の当たり券だったのです。
そしてハズレでない当たり券はカウンター窓口の人が親切にも捨てておきますよ、
と語って当たり券を受け取っていたことが後で分かります。
そして窓口の人は不当に高額な当選金を受け取っていました。
後に本来の当選者本人が当たりだったことに気付き、販売者を訴訟し和解。
ただその和解の条件が、他言しないこと、であった。
ここからがこの本の真骨頂、本題になります。
この”他言しないこと”という条件が怪しいと嗅ぎつけたメディアが、
統計学者の著者に依頼し、
他にも同じようなケースが起こっているのではないか、
もしそうであれば可能性はどのくらいか?
ということを調べるよう著者に依頼したところから全米を大きく揺るがす
スキャンダルにつながっていきます。
過去の高額当選者を調べると、販売カウンターの窓口で当選の該非判定を伝える職業の人が、
通常の宝くじ購入者よりも4倍も当選していることが分かったのです。
これを統計的に特定の職業の人に4倍の確率で宝くじが当選する確率は、何と
1兆×1兆×1兆×1兆分の1の確率であった。
つまりそんなことは通常では起こりえない出来事ということが判明します。
これをメディアは大々的に報道。
そこから当選を知らせるべき窓口の人が、ハズレたと虚偽報告により不正入手していたことが
次々に明らかになった。1つの州で始まったことだが、全米の各州に余波は広がり
一大スキャンダルとなるのです。そして当然、騙した方に逮捕者も出ました。
一方で、本来の当選者には当選金が利子付きで払われることになり、その点はとても喜ばしい
事実と言えそうです。
騙されていたことへの怒りも当然ですが、当たればその辺の感情は
吹き飛びそうですが。
おや?と思った身近な例を紹介。神社に行った後に競馬に当たった。
早速、本の知識を活かして私が体験した身近な例を紹介します。
私の同僚は神社にお参りした際、何かを頭に感じたそうです。(小さな葉っぱだったと私は疑っています)
そこで、その後に競馬に行き予想が当たったことで何と100万円近くもの当たり馬券が出て
その同僚は大勝ちしました。彼曰く、「お参りに行ったおかげ」と。
いやいやいやいや。ちょっと落ち着いて考えてみてほしいのです。
競馬でどの出走馬が勝つかはあくまで未確定。レースが終わるまでわかりません。
この同僚に何が起こっているかというと、ただの偶然の幸運を拾い上げて、
参拝のおかげで幸運なことが起こったと信じていると言えます。
言わば、大きな的にダーツを当てるようなものなのです。
仮に競馬で勝てなくとも、家族の誰かに食事券が当たった、自転車でこけたけど無傷、
腹痛やったけどトイレの個室が空いていて何とか間に合った、等々の出来事が
幸運にも起こり得ますよね?
その際に人は確証バイアスで「やっぱり、そうだったのか」と思うものです。
自分の行動は正しく、お参りに効果があったと思いたい気持ちが常にあるからです。
日常的に幸運であるということは、ほぼ間違いなく刺さるであろう大きな的に
ダーツを投げ込むようなものです。
つまり神社に参拝したことが”統計的に”競馬で勝つ確率を上げることは無いです。
この本の知識から見れば、ただ幸運がそこに重なっただけと言えます。
本を読んでの結論:幸運も不幸も一定の確率で起きる
当たり前のことを言うなと言われそうな結論ですが、本当にあなたは当たり前と
思っているでしょうか。
お参りに行ったことで、子供が受験に受かったり、仕事を受注したり、最悪を回避できた、
と思ったことがあるのであれば自分に再考の余地を与えてみましょう。
私もギリギリでトイレに間に合った時は
「神様、ありがとう。普段の自分が徳を積んでて良かった」
とついつい考えてしまいます。けれども、これはただの運ですよね。
トイレの個室が空いていたかどうかは偶然の産物です。
私は決してあなたの信じているものを否定するわけではありません。
別視点での考え方や物事の捉え方があることを忘れないでほしいということです。
これを知ることで詐欺や、うっかり騙されそうな勧誘にも対抗ができるようになります。
「それは、一定の確率で起こるものじゃないか?」
と脳に一石を投じることで関わる全ての出来事をより多視覚的に見ることができます。
その数々の証拠、実社会での出来事への統計的洞察力を学ぶにはもってこいの本です。
途中で統計用語の基本であるポアソン分布や、
ポアソン分布とは
ポアソン分布は主に「ランダムに起きる事故・病気の発症」などにおいて「特定の期間中に何回起こる確率が何%あるのか」を可能な限り正確に把握することで、適切なリスク管理を行うのに活躍しています。
https://atarimae.biz/archives/7372
P値
P値とは
統計的仮説検定において、帰無仮説の元で検定統計量がその値となる確率のこと。P値が小さいほど、検定統計量がその値となることはあまり起こりえないことを意味する。一般的にP値が5%または1%以下の場合に帰無仮説を偽として棄却し、対立仮説を採択する。
統計用語集より https://bellcurve.jp/statistics/glossary/2172.html
などの統計用語が出てきますが、理解できなくても問題なく読み進めることが可能です。
私自身も大まかな定義はわかっても、この計算方法などはわかりません。
著者はわかりやすくストーリー仕立てで語ってくれています。
結果、世の中の統計、統計的アプローチ自体にも興味がわく良書です。